私たちは言葉を介してコミュニケーションをしていますが、人の話を耳で聴き、その音を脳でデータ処理し、その意味を理解しています。このようなプロセスの中で、それぞれの人がもつ「脳の癖」によって処理の仕方に幅が出てきます。
「脳の癖」その1:脳は私たちの会話のスピードに付いていけない
人の話を耳で聴いて意味に変換していくにはものすごいスピードが要求されますが、脳の処理スピードがそれについていけません。私たちが人の話をちゃんと聴けないとか、気持ちをちゃんと受け止められないというのは、人格に問題があるのではなく、私たちの脳が速く理解しようと、優先順位でデータ処理するためです。さらに、個人差も加わることになります。
「脳の癖」その2.私たちは人の話を自分勝手に聴いている。
発音が同じ言葉、似たような言葉は聴いた人が自分の理解しやすいように聴きます。その結果、話している側と聴いている側とにギャップが生じます。知らない言葉、専門用語、経済用語、横文字・・・など、自分の知らない言葉になると、適当に飛ばして聴いています。このように、人の話を自分の理解が付いていけるように聴いている、つまり自分の聴きたいように聴いていると言えるのでないでしょうか。
「脳の癖」その3.「聴く環境」に大きく影響を受ける
話を聴くときの物理的環境や心の環境によっても話の伝わり方に違いが起こってきます。静かな環境では伝わりやすい話も、騒々しい場では半分しか聴き取れなかったり、広い空間で反響して聴きとりにくいという物理的環境にあったり、忙しくてせかせかした気持ちだと、人の話を端折って自分流に聴いてしまうことになり、相手の伝えたいことが聴けなくなります。それでも、自分は正確に聴き取っていると思っています。そんな時に、往々にして「言った、言わない」といったことになります。
〜「脳の癖」を知ると楽になる 〜
コミュニケーションのポイントは、人の話を聴くときに自分はこのような「脳の癖」をもっているという自覚です。自覚が出来ればできるほど、会話の受けとめ方が変わってきて、「私はこのように聴いたが、それは真実ではないかもしれない。相手の話は実際にはどうだったのかな?」と問い直すことが出来るようになります。
(長阿彌幹生氏の「コミュニケーション講座」の内容の一部を紹介しています)